インタビュー

祝・リーグ優勝!ブリーラム・ユナイテッドを優勝に導いた石井正忠監督インタビュー!

2021/22シーズンのタイリーグ1部の全日程が終了し、ブリーラム・ユナイテッドが今シーズンのリーグチャンピオンとなりました!
今回は、スペシャルインタビューとしてブリーラム・ユナイテッドを率いる石井正忠監督にお話を伺いました。

石井正忠監督の経歴

引用:https://www.instagram.com/buriramunitedofficial/
プロフィール

名前:石井正忠(Masatada Ishii)
生年月日:1967年2月1日
出身地:千葉県市原市
監督歴:鹿島アントラーズ→大宮アルディージャ→サムットプラカーンシティFC→ブリーラム・ユナイテッド(現在)

インタビュー

引用:https://www.instagram.com/buriramunitedofficial/

きっかけはタイクラブからの連絡

-本日はお時間をいただきありがとうございます。石井監督はそもそもどんなきっかけでタイで監督をすることになったのでしょうか?
「前年に現場を離れて鹿嶋市で家族と過ごしていた時期に、元鹿島の本田泰人の代理人を通して”タイリーグのクラブが僕個人に興味を持ってくれているので一度試合を試合を観に来てくれないか”と連絡があったんです。それで、週末を利用してタイまで試合を観に行きました。」

-当時は給食センターで働かれてたんですよね。
「そうです。当時は月曜から金曜まで給食センターで働いていたので、週末を利用して観に行きました。
タイへは鹿島アントラーズ時代の2017年に日タイ修好130周年イベント(※1)で訪れた事があるんですが、その前の年の2016年10月にもタイ遠征が行われ、その時練習で使わせてもらったグラウンドがサムットプラカーンシティFCのものだったんです。恐らくオーナーさんはその時に僕のことを知ってくれていて、その後クラブW杯で指揮しているのを観て声をかけてくれたんだと思います。」

-そうしてタイに来られたんですね。
「やはり日本で仕事をしてほしいという家族の意見もあったので、最初は1度お断りしているんです。ですが時期的にもタイミングが合わず次のクラブが見つからずにいたところ、再度サムットプラカーンシティFCから”石井さんにやってほしい”という話をいただき、家族と相談の上決めたという流れです。」

※1 日・タイ修好130周年 2017Jリーグ アジアチャレンジinタイ インターリーグカップ

すぐに適応できたタイでの生活

-日本からタイに来るというのは、国内で引っ越しをするのとはまた違う気がするのですが生活面ではどうですか?
「日本でも鹿嶋から九州や四国へ行くと言ったら時間がかかるものだと思うので、僕にとってはバンコクも成田から5、6時間の場所という感覚です。
生活はすぐに適応できました。サムットプラカーンシティFCに来た当初は、家族が来た時の便利さを考えて、バンコクでもサムットプラカーンに近く、ショピングモールが目の前にある場所を選んで住んでいました。ただ、練習場まで車で片道40分かかる場所で不便だったので翌シーズンにはサムットプラカーン(※2)に引っ越しました。

今いるブリーラム(※3)はバンコクより田舎で良い雰囲気です。クラブの持ち物の家に住んでいるのですが、綺麗でプールもあり快適です。」

※3 サムットプラカーンシティFCの拠点はバンコクの南側、サムットプラカーン県。
※4 ブリーラム・ユナイテッドの拠点はタイ東北部・ブリーラム県。

シーズン途中にリーグ首位のクラブの監督に就任

引用:https://www.instagram.com/buriramunitedofficial/

-今シーズン途中にリーグ首位のブリーラム・ユナイテッドの監督に就任された訳ですが、その時の気持ちはどうでしたか?
「まず、ブリーラムに来る経緯は、ブリーラムと関係の強いタイリーグ2部コーンケーンFCの監督だった三浦雅之氏から話を頂きました。 “クラブの意向としては、今後アカデミーを含めてトップチームを日本スタイルでやりたい”ということがあったようです。三浦氏とはS級ライセンス講習でも同期だったので、僕を推薦してくれたんだと思います。ブリーラムの監督に就任した当初は、タイ代表選手が不在、多くの怪我人がいて、残りの選手とアカデミーの選手でトレーニングが始まったので、正直苦労しました。しかし、オーナーさんからの大きなサポートの中で、良い仕事が出来るのではないかという自信も湧いてきました。」

-就任するにあたりクラブからどんな要求がありましたか?また、プレッシャーはありませんでしたか?
「アジアでベスト5に入ろう、そのためにタイの大会のタイトルは取ろうというのはありました。
僕はリーグで好成績を残してクラブW杯に出たいという思いがやはりあって、それはタイのトップリーグだったら可能なので、サムットプラカーンシティFCに来るときもオーナーさんに”ACL目指しましょう”と逆に提案したくらいでした。大変なプレッシャーがかかるというのは分かっていましたが、チャレンジしてみたいという気持ちがありました。日本と違って、文字も言葉もわからないというのが少しプレッシャーを軽くしてくれていると思います。自分のこと、練習や試合の事に集中できますね。」

タイ人選手のJリーグ挑戦について

スパチャイ選手
引用:https://www.instagram.com/supachai.9/

-チームについてお伺いします。ブリーラム・ユナイテッドの選手は皆さんタレント揃いですが、特に今年14ゴールを決めているスパチャイ選手はどんな選手ですか?
「アーム(スパチャイ選手)は能力が高く、練習でもこちらが要求したことがすぐ出来る選手です。周りとのコンビネーションも良く、身長が高いので守備のヘディングも強いです。Jリーグに行ったら活躍できるのではないかと思います。」

-他に、Jリーグで活躍できそうな選手はいますか?
「練習を見ていると特に若い選手は上手くなりたい、学びたいという姿勢を感じます。なので特定の選手というよりはもっと日本を目指す選手が増えてほしいなと思います。
日本は指導者育成がちゃんとしていて、指導者の質や練習の強度、向上心というか考え方もタイとは違いますし、日本で半年くらい練習したらもっと上手くなりそうな選手もいます。
今ブリーラムには日本人指導者がたくさんいますので、ここで日本のような練習環境を作って身体能力や考え方という面で成長できれば日本でも活躍できるのではないかと思います。
チャナティップやブンちゃん(ティーラトン)のような目標もいますし、タイ人選手は日本人に愛される、受け入れられる雰囲気があると感じます。」

日本人選手が活躍するために必要な能力

-石井監督が考える、タイで活躍できる日本人選手像を教えてください。
「僕もそうなんですがやっぱりコミュニケーション能力が大事だと思います。タイ語が話せるとか英語が話せるではなくて、言葉ができなくてもタイ人の懐に飛び込んで行くという気持ちは相手に伝わると思います。たとえ日本人スタイルのサッカーをしてほしいと言われても、タイ人の文化や生活習慣もある程度受け入れないと上手く行きません。そういうバランスがうまく取れる人が活躍できるのではないかと思いますね。」

全選手の顔を1日で覚えた -監督として心がけていること


-石井監督はブリーラムでもタイ人選手たちから慕われているように感じました。
「もちろんクラブには通訳の人もいますが、一生懸命伝えようとすれば思いは伝わるのかなと思います。なので、街に行っても屋台の人とかと仲良くなったりとか。ブリーラムではどこに行っても”石井監督!”という感じで声をかけられて、大人も子どももブリーラムのユニフォームを着ていますし、本当に鹿嶋みたいな雰囲気で僕は好きですね。」

-日本人指導者という立場であってもやはりコミュニケーションは大事でしょうか。
「そうですね。だから僕も最初サムットプラカーンシティFCに行った時は、3日目までに全選手のニックネーム(※4)を覚えて、トレーニング前に円になり”僕が呼んだニックネームが合ってたらハイタッチしよう、間違ってたらハイタッチしないでね”と言って1人ずつニックネームを呼んでいくというチャレンジをしました。1人だけ中々思い出せず、頭文字を言ってもらい全員正解することができたのですが、そうしたら選手も盛り上がって一気に距離が近づきました。そういうことも大切かなと思いますね。」

-全員のニックネームを覚えるのは凄い大変ですよね?
「25人いたと思うのですが、前日に一緒に写真を撮って、1人ずつ覚えていきました。チャレンジだと思ってやってみたらどうにかできたという感じですね。
僕は今までは鹿島で外国人を受け入れる立場だったのですが、受け入れられる立場になった時に”こうやって入っていけば一気に仲良くなれるんだな”というのが分かったので、今度また外国人を受け入れる立場になったときにはこういうコミュニケーションを取ったらすごく仕事がしやすくなるんじゃないかなというのも学んだりして、どちらの立場からでも良い関係が作れるんじゃないかと思いました。僕がブラジル人監督を支えていたときに何が足りなかったのかなと反省したりして、今になってそういうことも勉強になっています。」

※4 タイは名前ではなく、「チューレン」と呼ばれるニックネームでお互いを呼び合うのが一般的です。

今シーズン、そして来シーズンのACLへの目標

引用:https://www.facebook.com/BuriramUnitedFC/

-ブリーラム・ユナイテッドはリーグ優勝が決定し、この後はリーグカップとFAカップの戦いを控えています。今シーズンこれから、そして来シーズンに向けて意気込みをお願いします。
「カップ戦はそれぞれベスト8、ベスト4と残っているので、しっかり2つのタイトルも取りたいと思います。
リーグ戦では、クラブの関係者の方達もいろいろな準備をしてくれていた中、ホームゲームで優勝を決めサポーターと喜べなかったという気持ちと、今回ACLのグループリーグに進めなかった(プレーオフで敗退)という悔しい気持ちが残っています。来年はグループステージからACLに出られるので、クラブの目標はアジアでベスト5に入る事ですが、ACLを取ってクラブW杯に出たいというのが僕個人としての目標です。」

最後に…

指導者としての目線でタイ、タイリーグについて語ってくださった石井監督。特に石井監督が心掛けられている外国人選手とのコミュニケーション姿勢は、サッカーに限らず私たちみんなが見習わなくてはいけない姿勢だと感じました。

ブリーラム・ユナイテッドはこの後5月8日(日)にリーグカップの準々決勝を戦い、5月18日(水)にはFAカップの準決勝が控えています。3冠達成も目前のブリーラム・ユナイテッド、そして石井監督の活躍から目が離せません!