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【タイ1部リーグマッチレビュー】ジオゴ・ルイス・サントはBGパトゥムへどう対応していくのか?

今回は、BGパトゥムへの移籍が見込まれているFWジオゴ・ルイス・サント(Diogo Luis Santo)が、どうチームと対応していく事が望まれるのかを解説していく。

ジオゴ・ルイス・サントがBGパトゥムへ移籍

タイ1部リーグの優勝を祝う、そのような賞があるとするならば、BGパトゥムのブラジル人ストライカーが、後半戦に向けてタイトルにチャレンジする事を発表し、ついにFWジオゴ・ルイス・サント(Diogo Luis Santo)の移籍騒動に終止符を打った事だろう。

BGパトゥムは現在、第16節を前に無敗でタイリーグ首位に立ち、2位のポートとの得失点差を歴代最多で記録している。

BGパトゥムは、DFアンドレス・トゥニェス(Andres Tunez)、DFヴィクトル・マトス・カルドゾ(Victor Cardozo)、DFイルファン・ファンディ(Irfan Fandi・負傷前)、そして意外なことにFWチムタライ(Chatree Chimtalay)の存在に守られており、今シーズン14試合の内9試合でクリーンシートを獲得した。

しかし、ドゥシット・ジャルムセーン(Dusit Chalermsan)コーチのチームは、オープンプレーからの得点に苦労しており、ペナルティーキックやアンドレスとヴィクトルの空中戦でのセットプレーに頼る事が多い。

その解決策として、タイでこれまでにプレーした外国人選手の中で、最高のステータスを持つジオゴがやってくる事となった。

この戦術的な選択は、元ブリーラムUのフォワードがLEOスタジアムに何をもたらすのか、そしてBGパトゥムとドゥシットコーチが、どのようにして新しい守護神に適用しなければならないのかを探っていきたい。

クリエイティブなひらめきを豊富に持ったゴールマシン

ジオゴは、ウイングバックと3人のセンターバックを使うドゥシットコーチのフロント2フォーメーションに入る事が予想される。
彼は、ブリーラムU時代に非常によく似たセットアップで、104試合の内101ゴールを記録している。

BGパトゥムの犠牲としては、レオスタジアムで5年間、自らヒーローの地位を獲得したスペイン人アタッカーのMFダニエル・ガルシア・ロドリゲス(Daniel García Rodríguez)を手放す事を余儀なくされた。

ジオゴは、間違いなくダニエルよりもゴールスコアラーであり、狭いスペースでの鮮やかなタッチによって、他の選手のチャンスも作り出す事が出来る

ただし、ドゥシットコーチのゲームプランでは作業量が重要な要素であり、ダニエルがジオゴをわずかに凌駕している部分であると考える。

ジオゴをFWチェンロップ・サンファオディ(Chenrop Samphaodi)のような勤勉なストライカーとペアにして、汚れ仕事の大部分をチェンロップに任せる事は、ドゥシットコーチにとって最も賢明な選択肢のように思う。

チェンロップは、8試合に出場して2ゴールと2アシストしか記録していないにもかかわらず、ルーズボールを追いかけたり、プレスをリードしたりするという彼の決断力が、スターティングメンバーのポジションを獲得している要因だろう。

ジオゴは自分の力でゲームを好転させる事ができる選手であり、チェンロップと一緒にプレーさせる事で、彼の得意なプレーに集中できるようになるだろう。

ウイングバックとしての役割を変更

ジオゴは、FWジウベルト・マセナ(Gilberto Macena)やFWジャクソン・アヴェリーノ・コエーリョ(Jaja Coelho)など多くのブリーラムUのストライカーと良好な関係を気づいていた。
しかし、彼の真のパートナーは、現在J1リーグの横浜F・マリノスの代表として活躍しているDFテーラトン・ブンマタン(Theerathon Bunmathan)である。

ブリーラムUで一緒にプレーしていた頃、チームの代表的なプレーパターンは、ジオゴが左サイドのハーフスペース(黄色)に入ってきて、インサイドレフトのチャンネル、つまり左サイドのハーフスペースに落とし、その間にテーラトンがタッチラインに沿って前に押し出すというものだった。

これによりブリーラムUに有利な条件で過負荷が発生し、数的優位性を介して相手のディフェンスを解除する事を可能にする。

ハーフスペースでボールを受け取ると、ジオゴは素早いギブアンドゴーパスでテーラトンにスルーパスを送ったり、ゴールに向かってターンして自らシュートを放ったりする事が多かった。

ブリーラムUのレフト線上の優位を無効化しようと、相手はジオゴとテーラトンにシフトし、順番に対角線上へと長いボールで攻撃を仕掛けて対抗策を暴こうとした。

違いは細部にあるが、BGパトゥムは、3バックとウイングバックのアタックを含む同様のフォーメーションでプレーしている。
だからこそ、ドゥシットコーチがジオゴを同様の方法で展開することが期待できるのだ。

しかし、タイトルレースで新たな守護神となったジオゴの力を最大限に引き出すためには、ドゥシットコーチは、左ウイングバックの戦術的な指示に、少し手を加える必要があるかもしれない。

DFサハラット・ポンスワン(Saharat Pongsuwan)は、現時点でドゥシットコーチが選ぶ第一候補の左ウイングバックだ。
ここまでのリーグ戦14試合で、欠場したのはわずか2試合である。

24歳のサハラットは「タフでエネルギッシュ」というプロファイルを持っており、テーラトンとは対照的に、狡猾で技術的な一面を備えている。

ジオゴをフォーメーションに組み込む際に最も重要となるのが、深い位置からボールをクロスさせる事を好むサハラットの特徴だろう。

一方でテーラトンは、味方を追い越して加速し、ゴールラインからカットバックを運んだり、サイドからクロスを入れたり、深い位置からチップパスを入れたりすることが出来る。

ドゥシットコーチは、サハラットとは別に、FWスラチャート・サーリーピム(Surachat Sareepim)をターゲットマンとして左ウイングバックに起用した。

スラチャートは、そのフィジカルとフルバックとしてのプレー歴のおかげで、バンコクUとのアウェイ戦でDFトリスタン・ドゥ(Tristan Do)を抑え込むのに非常に効果的であった。

それでも、それは1回限りの戦術的な決定であり、スラチャートはそれ以来プレーしていないので、34歳になるジオゴと共にプレー出来るのかは疑わしい。

チェンライUから新たに加入したウインガーのMFパトンポール・チャロエンラッタナピロム(Pathompol Charoenrattanapirom)は、攻撃的なウイングバックとして活躍する事が出来るが、ポジションを離れて、より多くの守備を任せる事が出来るかどうかは、まだ分からない。

ホームの大観衆の前で得点するシニアデビューしたスパサック・サラピー

最後になったが、BGパトゥムのチーム内で最も若い選手、20歳のMFスパサック・サラピー(Supasak Sarapee)を紹介する。
スパサックは、俊足でやや軽量な選手であり、アカデミーの卒業生でもある彼は、BGパトゥムのチームの中で最もテーラトンに近いプロフィールを持っている。

これはドゥシットコーチにとってかなりのジレンマとなっている。
サハラットは、最も安全な選択だが、ジオゴのサポートとしてはほとんど機能しないからだ。

スラチャートとパトンポールは、1回限りのゲームで特定の相手に対して対策をすることは出来る。
また、スパサックはジオゴのベストを引き出す為に必要な素質を兼ね備えているが、まだ経験が浅いので、一貫性が問題になるかもしれない。

相手のボックスに突入した時に持ち味を発揮する

ゴールを決められるディフェンダーがいる事は、どのチームにとっても歓迎すべき事だが、セットプレーやPKに頼らなければならないのは心配である。

残念ながら、BGパトゥムはトップスコアラーがヴィクトル(9点)であり、センターバックのアンドレス(5点)であるため、後者のカテゴリーに分類される。

ジオゴのクオリティの高さがあれば、ゴールを決める役割をストライカーへと戻し、最終的には、BGパトゥムをより充実したチームへと昇格出来るだろう。

いずれにしても、ここで注目すべきなのは「ジオゴがどれだけのゴールを決められるか?」ではなく、「ジオゴはどんなタイプのゴールを決められるのか?」という事である。

ストライカーの仕事のほとんどはオフザボール、つまり、ディフェンダーを振り払ったり、チームメイトの為にスペースを作ったりする事である。

ダニエルとチェンロップをトップに置いてプレーすることで、BGパトゥムはしばしば攻撃に迷いが生じ、歯が立たないように見える事がある。

ウイングプレーは、BGパトゥムのゲームプランにおいて重要な部分であり、特にDFサンティファップ・チャングム(Santihapap Channgom)を経由して右サイドに降りる事が重要なので、クロス(ハイまたはロー)やカットバックを供給できるプレーヤーを確保する事が賢明だろう。

ダニエルとチェンロップは、身長が高くない為、どちらもファーポストのクロスには消極的だ。

天性のミッドフィールダーであるダニエルは、ボックスの端での動きを鈍らせ、中央に留まり、カットバックパスまたは相手キーパーからのリバウンドを待つ傾向がある。

一方チェンロップは、10回中9回はニアポストに全力疾走する傾向がある。
これは、FAカップのムアントンU戦で、DFルーカス・ロッチャ(Lucas Rocha)ルーカス・ロシャがチェンロップの動きを読みとって、簡単にブロック出来た事からも明らかなように、予測可能な事である。

幸いなことに、ジオゴはこれまで欠けていた要素を新しくもたらしてくれる。

身長182cmのジオゴは、ファーポストにヘディングで飛び出す事ができ、優れたタッチとバランスで、ゴールラインからの低めのカットバックパスを決める際に威力を最大限に発揮する。

ジオゴの動きによって、BGパトゥムのウイングバックは、数種類のクロスを混ぜる事ができ、その結果、予測不可能な要素が加わり、より強力な攻撃が出来るようになるだろう。

成功を保証するのに最も近いもの

成功が保証されているわけではないが、ジオゴの手腕には誰も何もいう事が出来ない。
その為、現時点で彼は、BGパトゥムの成功が保証されたものに最も近い存在となっている。

クラブと選手がお互いに適応するには時間が必要だが、部外者としては、ジオゴが成功する為の環境は整っているように見える。

戦術やプレーヤー選考に少し手を加えるだけで、BGパトゥムはリーグ戦を制覇する事が出来るだろう。

この記事はThai League Centralからの翻訳です。(翻訳:安藤海)
元記事URL:https://thaileaguecentral.com/2020/12/23/how-will-diogo-luis-santo-fit-in-bg-pathums-title-challenging-team/